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身体の状態を触って知る『触診』の前に知っておくべき大切なこと

「患者さんが訴えている痛みはどこから出ているんだろう・・」

「患者さんはどこに異常があるのか把握してどんな治療をするべきか・・」

治療(施術)を行うものとしては、患者さんの病態をきちんと把握して原因に対して正確な施術をおこなう必要があります。

「そんなことは当たり前じゃないか!」

と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、患者さんの

問診と簡単な触診でだいたいの治療パターンに当てはめて治療している

どんな痛みでもだいたい同じような施術パターンでおこなっている

など、正確な病態把握をすっ飛ばして施術に入ってしまう治療家が多いのは確かでしょう。

もちろん、ネチネチ検査検査とあれこれするばっかりで結局患者さんの症状を改善させられないという本末転倒なことをしてもいけませんが、とにかくその場だけ楽になるようにして帰せばいいという考え方では質の良い治療は提供できないでしょう。

そこで、「触診をしっかり見直していこう!」と思われた方や、「これから立派な治療家になって患者さんをよくしていきたい!」と思われる治療家の卵の方などに、治療家なら誰でもするものだし当たり前のことだからこそ基本をじっくりみていっていただきたいと思います。

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触診をする前に注意すること

まずは、触診をする前に触診をする指(手)の準備がきちんと済んでいるかどうか確認しましょう。

まずはチェックしておきたいことは

  • 爪を切っておく
    爪が長いと触診時に患者さんの皮膚を爪で刺してしまうことになります。
    1
    ベテランであっても触診が難しいところであれば必然的に力みやすく指を刺すように立ててしまいます。
    爪は短くできれば一般の方から見ると『深爪』にみえるくらいしっかり切っておきましょう。
    2
  • 手が冷たくないか
    これは冬場ではかなり気を付けておきたいことですが、自分の手が冷たい状態で患者さんを触ると患者さんがビックリしてしまいますし、それが毎回となればかなり不快になります。
    自分は手先が冷えやすいのか?今は冷たいのか?冷たければ温めるように対処するように気をつけていきましょう。
  • 肌荒れがないか
    消毒を良くすることが多く、肌が荒れてしまう治療家の方もいらっしゃます。
    もちろんある程度仕方のないケースもあります。
    見た目がよいほうがいいですし、ガサガサの手で触られるのはあまり気持ちよくありませんので常にきれいな手であれるようにケアをしておきましょう。

です。

爪なんかは数日忘れていると伸びてきてしまっていますので、

万が一のために爪切りを置いておく

爪のチェックする習慣を作って常によい状態を保つように

普段から気を使っておきましょう。

 

患者さんに安心して受けていただくために

実際、患者さんに『触診』を行っていくときにいくつか注意しておかないといけないことがあります。

それは、治療家が患者の身体に起こっている問題を見つける職業的本分を果たそうとするわけですがだからといって、機械の故障個所を探すようにしていてはいけません。

機械と違ってヒトに対して行っていますから、受け手となる患者さんの心理面に配慮した行動が求められています。

「患者さんを治すのが治療家であって、何も患者に媚びてサービスする必要はない」

と考える昔ながらの治療家の方もいるかもしれませんがそれは大きな間違いです。

患者さんの緊張を解き、患部をなるべくいい状態で触診し、適切な治療を行って身体が楽になるのはもちろんですが、心も安心して受けていただいた後の治療結果に満足していただくことが患者さんにとっては治療効果を高めるためには必要なことだからです。

では、患者さんへの『触診』をする前のもっとも基本的なことを紹介しておきます。

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触診の主旨を説明する

説明

まず最初に患者さんに『触診』のため身体に触れることを伝える必要があります。

患者さんの話を聞いていて、十分話を聞き終わったのでそろそろ触ろうかな・・と思うのは治療側だけであってそこからいきなり触りだしたら患者によっては

「話をしていたらいきなり痛いところを触ってきた!」

と不快に思われる方もいらっしゃるかもしれません。

対象者にこれだけ接近する職種も少なく、他人同士が接して相手に触らせることは世間では当たり前のことではありません。

「痛いところの状態を確認しますので触ってもよろしいですか?」

と一言声をかけて同意を得ておくことは些細なことですが非常に大切なことでしょう。

痛みや不快な感覚などがあった場合には教えてもらう

『触診』の同意を得ましたら触っていきますが、ここで注意しておかないといけないのは

『患者さんは痛いのを我慢する』

傾向があることです。

治療者が『触診』をしているときに、『痛い』だの『気持ち悪い』だの声をあげることは診察の妨げになると考えてなるべく邪魔をしないように・・という配慮のため、その不快な感情を我慢しようしがちです。

しかし、治療家にとっては『触診』に伴う患者さんの感覚は

  • 触っている部分の状態を把握する
  • 無理に刺激しすぎて悪化させない

などのためには非常に大切な情報です。

「もし違和感があったり痛かったりしたら遠慮なく教えてくださいね」

と一言声をかけてから『触診』を行うと患者さんは安心できますね。

ただし、本当に『痛み、違和感』を訴えたのに

「大丈夫ですから・・・」

「もう少しですから我慢してくださいね・・・」

なんて歯医者みたいなことをすると患者さんが

「じゃあなぜ知らせろって言ったんだ!?」

とがっかりさせてしまいますのでそのような対応はしないでください。

 

ファーストタッチは主訴の部分から

例えば、『坐骨神経痛』症状の患者さんがいらっしゃって

「右足の脛がしびれているし痛いんだけど・・」

とおっしゃった場合、治療家としては脛の部分を触ることも大切ですが『坐骨神経痛』に関連の深い

『腰からお尻にかけて』

がどのような状態か確認をとりたくなります。

だからといって患者さんの訴えている脛を後回しにしていきなり腰からお尻まわりばかり『触診』してしまうと

ファーストタッチ1
患者さんとしては

「腰痛もあるけど・・・おれが痛いって困ってるのは右足の脛なんだけど」

という不安が起こってしまいます。

ただでさえ、症状に苦しめられて不安な状態の患者さんを安心させることが治療家の役目のひとつなのに、余計に不安にさせるような行動は控えるべきでしょう。

こういった場合は、右足の脛を少し触って状態を確認してから

ファーストタッチ2

「また後で右足の方を診せていただきますが、どうも腰・お尻あたりも関連がありそうなのでそちらを今から触診させていただきますね」

と言って(患者さんからすると患部と関係のない)別の場所を触診していくことが必要です。

 

できれば1対1で行わない

治療院は、最近はやや大型化・チェーン店化をみせていますがそれでも個人経営で行われるのが主流だと思います。

また、開業したての場合であれば、『訪問治療』をしたり『ひとり院』ではじめることもあります。

その場合特に注意しておきたいのが、

『患者さんと密室で1対1で接している異常な状態』

になっていないかどうかに配慮することです。

複数人スタッフがいても

カーテンで閉め切っていたり

個室での施術をおこなっていたり

した場合であれば状況は同じようなものです。

施術者と患者さんが異性同士であった場合(特に施術者が男性、患者が女性)は、患者さんの年齢に関係なく注意が必要です。

「治療と言いながら痛いと言っていない場所を不必要に触られた」

などというクレームが生じるトラブルが起こる可能性があります。

これは起こってからでは大変です。

誤解をされないように

  • 内容によって、受付や他のスタッフに同席してもらう
  • 家族を連れてきてもらう
  • 近くにスタッフがいることをアピールしておく

などのリスク管理の意識をもっておくことは大切でしょう。

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触診の注意

実際に患者さんに対して『触診』を行っていきます。

『触診』する側は、患部を触診することに夢中になりすぎて冷静に客観的に見つめたときにはしないようなこともしてしまいがちです。

『触診』でそのような失敗をしないためには、常に起こりうる失敗をしないようにイメージで確認しておくことが大切です。

では、順番についやってしまいがちな『触診』での失敗をみていきましょう。

 

できるだけ短時間で済ませるように意識する

『触診』しなれている場合や、問題が明らかな場合ではなく、病態がつかみにくい患者さんの場合に起こりがちなのが、原因を探すために必死に触っているうちに長時間患部周辺をグリグリ触ってしまっていることです。

その間ずっと患者さんに辛い思いをさせてしまい。病態によっては悪化を招いてしまうこともあります。

そのため、心の中では常に

『最小限の時間、最小限の刺激で病態を把握する』

ことをイメージしておかなくてはいけません。

 

左右ある場合は健側から確認する

例えば右足を痛めている患者さんがいた場合、

健側から1
最初に患者さんが気にしている場所を触るのが原則です。

痛みのある位置の確認など簡単に最初に確認するのは傷めている側から始めてよいでしょう。

しかし、なるべく痛めている側を長々と触りたくないためその方の足の正常な状態をまず確認してから

健側から2
患部を触るほうが問題が検出しやすくなります。

健側から3

患者さんには

「なるべく○○さんに辛い思いをしていただきたくありませんので、先に健康な左足を確認しさせていただきますね。先に健康な状態を確認しておいてから右足を触ると右足にどのような問題が起こっているかすぐにわかることができます。なるべく痛い右足を触る時間を減らしつつもしっかり状態を把握したいのでこのような手順で行いますね。」

と断りを入れておくことは大切です。

 

2カ所を同時にみようとしない

同時に
例えば膝を診るときに、両足の同じ場所を両手で押さえてその違いを効率的に把握しようとすることがあります。

もちろん時間効率を追い求めることは大切ですが、その少しの時間の短縮のために

触診の精度が落ちてしまう

患者さんからすれば雑に扱われている印象を抱かせる可能性がある

ことから、最初はやはり別々に健康な側から触って痛いと言っている場所を確認するようにするのが間違いなくて良いでしょう。

最初は別々に、最後の確認に同時に、というような順番くらいでおこなうのはいいですが、同時になんでも行って効率的に済ませようとする考えが先行してしまうのはあまりお勧めできません。

 

できる限り患部は露出し、視診を同時に行っておく

視診

患者さんは服の脱ぎ着は面倒ですし、肌を露出することに心理的抵抗がある方がいらっしゃる場合もあります。

しかし、治療家としてはなるべく患部までの間に余分なものが挟まっている状況をなくす努力をすることは必須です。

以前、聞いた話ですと、鍼治療を衣服の上から行う治療院があると聞きました。

患者さんからすれば、肌をさらさないでいいという利点があるのでしょうが、鍼を指すポイントがどのような状態なのか常に確認する習慣をつけておかないと治療技術が一定以上から向上しなくなります。

患部をきちんと診て、

  • 腫れていないか?
  • 肌の色は他と違っていないか?
  • 体毛の生え具合は違っていないか?

など視診から得られるたくさんの情報を常に見逃さないように心得ておくことをお勧めします。

それと、触診結果との関連性などを知ったり・考えたり・経験していくことが大切です。

 

まずはランドマークを見つける

患部を触ってから、その部分にどんな組織があるのか診ていかないといけません

それには、その場所がどんなところなのかきっちり確認する必要があります。

そこで、目的としている場所の周辺の解剖学的指標(ランドマーク)を順番に確認していきます。

触りながらあれこれ移動していると、そのうち自分の現在触っている位置を見失うことがありますが、ランドマークを確認していればそこから現在地を確認することができます。

知らない土地を旅したときに、地図を見ながら主要な場所を押さえて行動するのと同じ要領です。

例えば、『ガーディ結節』を触診したいと思った場合で考えてみますと、

ランドマーク1
いきなり触るにも出っ張り感が曖昧なので見つけづらいので、もっとわかりやすいランドマークとなる
『脛骨粗面』を確認します。

ランドマーク2
そのあとに『膝のお皿(膝蓋骨)』をみつけて、そのわきにある凹み(関節のあるところ)をチェックします。

ランドマーク3
おおよそ、

  • 外側の膝蓋骨の斜め下
  • 脛骨粗面の外側斜め上

あたりに『ガーディ結節』があるという位置関係から推測します。

ランドマーク4
すると、大きな誤差がなくみつけられるようになります。

ランドマーク5

 

患者さんの顔をみておく

顔を見る2
顔を見る1
患者さんは、診察の邪魔になるようなことはしないようにと気を使ってくださいます。

押されている場所が痛くても少々なら我慢してくれるものです。

ただ、治療においては患部への刺激に対する反応を確認するのは必要な情報ですし、患者さんを意図に反して傷めつけたくもありません。

「痛かったり違和感があったりしたらすぐに教えてくださいね」

と最初に声掛けすることも大切なことですが、それでも我慢される方が多いのでこちらから患者さんの反応を常に観察しておくことが大切です。

ちょっと痛そうな表情をみせたときに

「痛みありますか?」

と聞くと、ほぼ必ずと言っていいほど

「大丈夫です」

と答えられます。

その心遣いはうれしいですが、その刺激を続けていいのかどうか治療家は真剣に考えなければいけませんので、患部の触診に気をとられて患者さんの声に出さない反応(表情)を見逃さないように常に意識しておくことは必要です。

 

患者さんに触診内容を伝えたり、誘導するようなことは言わない

触診しているときによくあることですが

「ここがおかしいですね」

などを触りながら患者さんに伝えるのは意図して行う場合は別として、基本的にはあまりそのようなネガティブな情報は与えないように心がけましょう。

もしくは、

「ここがおかしいですね、なんか触られている感覚が他と違いませんか?」

なんて質問をすることもありますが、このような無意味な質問はやめましょう。

気を遣う患者さんならどう感じていようが

「そうですね・・・他に比べて感覚が違うような気がします」

と答えるに決まってします。

そんな無理やり言わせたような情報は何の役にも立ちませんし、なんなら知りたいことから遠ざかってしまう混乱のもとにもなりかねません。

触診中には余計な所見は言わないようにすることが肝要です。

 

指先ではなく指の腹で触る

『触診』を行うとき、基本は指の腹の部分で行いますが

指の腹1
意識して習慣づけておかないと『指先』で触ってしまいがちになります。

指の腹2

指先で『触診』することは力強く触りやすいためついやってしまいがちですが、

ついつい力強く触診してしまう悪習慣が身に着いてしまう

患者さんの身体への刺激が強くなってしまう

指を立てて触ることで爪が当たりやすくなってしまう

ことなどの問題がありますので、指の腹で常に触診するように努めておきましょう。

飛行機の離着陸の圧力(ポンピングしない)

触るときの圧のかけ方をするときには、飛行機の離着陸を意識するとよいでしょう。

  • 押さえる時
    →飛行機が着陸するときのように柔らかくジワーっと圧をかけていくイメージで
  • 離す時
    →少しずつ地面から離れるようなイメージで

行えば刺激はやわらかく、細かい感触がきちんと得やすくなります。

1番してはいけないのが、ある場所を押しては離して押しては離すようなリズムをつけた押し癖はつけないようにしましょう。

余計な刺激を患者さんに与えるだけで、浅い感覚情報しか得られません。

なぞるように触っていき、触る場所をポンポン変えない。

ポンポン1

これもポンポン跳ねるような触診をする人に多いのですが、あちこちをポンポンポンポン跳ねるように押しながら移動する癖はつけないようにしましょう。

ポンポン2

このような触り方は短気でせっかちな人に多いような気がしますが、余計な刺激を与えてしまうだけで効果的な触診方法とは言えません。

 

施術前後を比較できる場合はしておく

筋肉のコリやハリであったりの場合は、施術後どのような変化があるかを確認しておくことをお勧めします。

その触診結果を

「施術前より緊張が緩和しました」

などと、患者さんに伝えるのかどうかはその治療家の考え方次第ですが、触診・治療技術の向上のためには触って確認し毎回評価する癖をつけておくことは大切です。

 

おわりに

治療家にとって『触診』は特に身近なことですが、治療の花形となる『治療手技』には細心の注意を払いがちですが、

  • 冬に手が冷たくなっていないか確認したり
  • 患者さんの痛みの訴えの場所を触らず違うところばかり触ったり
  • おおよそ問診で病態の推定ができたからって触診を飛ばしたり

など油断が形にでやすいのが『触診』の怖いところです。

治療家にとっては『触診』と『手技』は明らかに違いますが患者さんにとってはその境目がはっきりしません。

そのため、『触診』を雑にしたり飛ばしたりするといくら丁寧に『手技』をして症状の改善ができたとしても

患者さんにその効果を肯定的に受け止めてもらえない

自分の期待と実際の効果に差があっても気づかない

などの問題が起こってしまいます。

また、ベテランの治療家がよく口にすることですが、

「治療結果は手技をする前までの準備によってほとんどが決まっている」

ということです。

手技をする前に

  • 患者さんへの適切な対応で信頼関係を築き
  • 適切な視診・問診・触診など診察によって的確な病態把握を行い
  • 患者さんが緊張せず施術を受けられる最適なポジション(環境)を準備し
  • 施術者が最適な手技を行える道具のセッティングや自分のポジショニングをおこなえたとき

『施術』が持ちうる力を100%発揮できるようになるわけです。

そのときできる最善の治療を提供するためには、『触診』をおろそかにできませんのでいつも心が緩まないように気を引き締めて行っていただければと思います。

 

ポイントを整理

触診は患者さんに納得して受け容れてもらえる環境づくりから

患者さんは傷めているところを触られているということを忘れない

健側との比較、治療前後での比較、常に違いを感じとる

日々の治療の感覚を大切にする=毎日が練習=触診スキルの向上

日々の治療を漫然と行う=ただの流れ作業=触診スキルは変わらない

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