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股関節の複雑な動きの筋力を正しく評価する徒手筋力検査法について

足腰がしっかりしておくのは健康の秘訣だと昔から言われています。

実際、治療で患者さんを診ていますと加齢に伴って足腰の筋力が低下していかれる姿をみます。
また、神経痛などで足に力が入りにくくなってしまっているというのもしばしば遭遇します。

治療家としては具体的にどの動きの筋力がうまく発揮されていないのか?を探ることは患者さんの病態把握に欠かせません。

今回は、前回の股関節の前後の動き(屈曲・伸展)に続きまして、

外転

内転

外旋

内旋

についての筋力の評価とそのときの代償動作などのポイントを紹介していきたいと思います。

なお、屈曲・伸展についてご覧になりたい方はこちらからお願いします。

治療に活かせる『徒手筋力検査』股関節の筋力・筋バランスを評価

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股関節外転

股関節の外転の動きは普段の生活でなかなかすることがありません。

イメージとしてはバレリーナが脚を横から挙げているのが出てくるくらいでしょう。

確かにこの動きはあまり運動としては行われることはありませんが

『歩いているとき片脚立ちになるときに身体が傾かないように支えている』

時に外転の動きの筋力を発揮しています。

そのため、外転筋力がきちんと発揮されないと歩行に問題が生じることにもなりますので臨床上では非常に大切な動きになります。

 

検査の準備・手順

  1. 患者さんには横向けに寝てもらいます。
    下の脚はまっすぐでも
    外転-検査1-2
    膝を軽く曲げておいても
    外転-検査2-2
    構いませんが軽く膝を曲げておく方が身体の安定性がよいので一般的には膝を曲げるように伝えると患者さんが楽に検査を受けられます。
    外転-検査2
    寝るときに患者さんは、自然な横向けをすると骨盤が床に対して垂直にはならなくて少し上側の骨盤を後ろに引いた状態(骨盤 後方回旋)で寝てしまいがちです。
    外転-検査3-3
    検査としては床に対して垂直にしておくように伝えましょう。
    外転-検査4
  2. 検査する人は、骨盤の動きを抑え股関節の運動を作りやすくするために骨盤の横側を押さえておきます。
    外転-検査5
  3. 脚をまっすぐ天井に向かってあげることを確認しておきましょう。
    外転-検査6
    無意識に挙げるとほとんどの人がやや前方向に脚を挙げてしまいます。
    外転-検査7
  4. 膝のやや上に太ももの横側に手を添えて床に押さえつける力を抵抗として加えます。
    外転-検査8
  5. 合図とともに運動をしてもらい、必要に応じ抵抗を加えていきます。
    外転-検査9

 

代償動作・注意点

  • 骨盤を引き上げる動き(代償動作)を加えることで足を挙げやすくしようとします。
    外転-代償1
  • 大腿筋膜張筋が働くと、脚がまっすぐ天井方向ではなくやや斜め前方向に挙がってしまう(股関節 屈曲)動き(代償動作)が起こりやすくなります。
    外転-検査7
  • 縫工筋の働きによって、先ほどの大腿筋膜張筋の動きもより起こりやすくなり、更には足先はまっすぐ正面を向いているのが基準ですが、やや天井方向に足先が向いてしまう(股関節 外旋)動き(代償動作)が起こりやすくなります。
    外転-代償3
  • 脚をあげるとき、股関節の前側の筋肉(股関節 屈筋群)を使うと挙げやすくなるため、身体は自然にそれらの筋肉群の動員しようと身体を後ろ側に捻って少しでも仰向けに近づこうとする動き(代償動作)が起こりやすくなります。
    外転-代償4

 

臨床や実際の治療での応用

股関節 外転の動きは、まっすぐ横に脚を挙げるような動きは我々の生活上起こり得ない動きで、実際にできる角度も限られています。
それでも、そのような非日常的な動作を検査で行う意義は、検査の正確性と検査条件の再現性を重視しているためです。

日常生活における股関節 外転の動きは外側に脚を振り上げる動作(等張性収縮)よりは、脚が浮いた状態で身体をキープする力(等尺性収縮、静止性収縮)がいかにうまく発揮できるかの方が求められます。

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股関節内転

股を締める動きになりますが、最近は女性でも股をガバッと開くのでこの筋力の低下が強く起こっています。

昔から

  • 男性
    股関節は閉じやすく、開きにくい
  • 女性
    股関節は開きやすく、閉じにくい

傾向があります。

そのバランスを図るためか、生活習慣上では

女性は着物などでも股を大きく開けないようにしていた

男性は股が開きやすいような服装や所作をしていた

とその性差にあわせた所作がありましたが、現代ではそれがどんどん失われてきております。

そこで、股関節をしっかり閉じるこの筋力は

  • 歩行での安定性を作る
  • O脚を作りにくくし、変形性股関節症・膝関節症などの予防に役立つ

などがありますので、みなさんにとって日常生活で動きとして使うことはありませんが必要性は高い筋力になります。

 

検査の準備・手順

  1. 患者さんは横向けに寝て、上側の脚を下側の足の前に置きます。
    内転-検査1
  2. 骨盤はできる範囲で床に垂直になるように伝え、うまくいくようにサポートします。
    内転-検査3
  3. 内ももの膝上あたりの位置に手を添えて床に押さえつける力を抵抗として加えます。
    内転-検査4
  4. 合図とともに運動をしてもらい、必要に応じ抵抗を加えていきます。
    内転-検査5

 

代償動作・注意点

  • 身体・骨盤が後ろへ倒れていくことで、股関節の前側に曲げる筋肉(屈筋)を使おうと自然にします。
    内転-代償1
  • 股関節から脚をうまくあげられない方が多く、膝から下を挙げようとする力を無意識に入れてしまいがちです。
    膝を傷めている方の場合は、膝に違和感・痛みが出ることがありますので動きの意識を最初にきちんと確認しておきましょう。

 

臨床や実際の治療での応用

股関節 内転の動きは、筋力検査として片脚ずつきちんと計測するには、

  • 今回紹介した方法内転-応用1
    骨盤が傾きやすいという問題点がある。
  • 両足を持った状態で上の脚ごと脚を持ち挙げておこなう内転-応用2
    検査する人が患者さんを抱え上げながら行うため、一定以上の体格・筋力が必要となります。

方法などがあります。

臨床的には、評価も大切ですがその先の治療はもっと大切なので、実際にはもう少し簡便な方法をとることがあります。

  1. 患者さんはあおむけに寝て両ひざを三角に立てます。
    内転-応用3
  2. 検査する人は、患者さんの両膝の少し上の内ももに手を添えて床に押さえつける力を抵抗として加えます。
    内転-応用4
  3. 合図とともに内ももを締めるように(内転)運動をしてもらい、必要に応じ抵抗を加えていきます。
    内転-応用5

この方法では、厳密には

重力下で行えていないため、段階わけができない

片側ずつの筋力の発揮の差がわかりにくい

ことから検査としてはあまりよい方法とは言えません。

しかし、臨床的には

  • 患者さんも検査する人も簡単に行うことができる
  • 瞬発的に力の発揮ができるかうまくできないかをみることができる

などの利点もありますので、実際の現場では使える方法であると考えます。

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股関節外旋

股関節の外旋の動きを単独で行うのは、バレエのような特殊なスポーツの立ち方くらいで他には見当たりません。

そのため、この動きが単独で必要とされることはありませんが、歩行などの日常生活での股関節の動きは実は直線的に行われているのではなく外旋や内旋のようなねじれが伴って行われています。

そのため、正常な股関節の動きを作るにはこの目立たないねじれがきちんと起こせることが非常に大切になってきます。

 

検査の準備・手順

  1. 患者さんには、横向けに寝てもらいます。
    外旋-検査1
    上の脚は、曲げて下の脚の膝の前に置きます。下の脚は膝を90°近く曲げておきましょう。
    外旋-検査2
    手は身体が安定しやすいような位置についておきます。
  2. 骨盤がねじれないように伝えておきますが、動き(代償動作)が出そうであれば骨盤を手で押さえておいてもよいです。
    外旋-検査4
  3. 足首のやや上の内すねあたりの位置に手を添えて床に押さえつける力を抵抗として加えます。
    外旋-検査5
  4. 合図とともに運動をしてもらい、必要に応じ抵抗を加えていきます。
    外旋-検査6

 

代償動作・注意点

  • 大腿筋膜張筋が強く伸ばされるために、
    ・外旋の動きに制限が出たり
    ・膝が前に出てきてしまったり(股関節 屈曲)
    外旋-代償1
    する動き(代償動作)が起こりやすくなります。
    この大腿筋膜張筋の制限が強く出やすくおこないにくいこともありますので、股関節が曲がった状態になりますがやりやすい方法を紹介しておきます。
  1. 患者さんはベッドの端に座ってもらいます(端座位)
    外旋-代償3
  2. 身体(体幹)が安定した状態で検査をおこなうためにベッドの上に手を置いておくように伝えます。身体が丸くなる代償動作が起こりやすいため背筋を伸ばして行うように声をかけておきましょう。
    屈曲-検査3-2
  3. 検査する人は、膝のすぐ上の太ももの外側に手を置いて患者さんの脚が外側に広がらないようにサポートします。
    外旋-代償6
  4. 反対の手で患者さんの足首の少し上の内すねに押さえつける力(抵抗)を加えます。
    外旋-代償7
  5. 合図とともに運動をしてもらい、必要に応じ抵抗を加えていきます。
    外旋-代償8
  • 主に縫工筋の作用が加わるため、膝が外側にきやすく(外転)なります。外旋のねじりを主とした動きをみるためには、その動き(代償動作)が起こらないようにサポートする必要があります。

臨床や実際の治療での応用

  • 臨床上は、他の股関節の動き(屈曲・伸展・外転・内転)に比べて更に単独では動きが起こりにくい動きであり、しかももともとの筋力もあまり強くないため評価が難しい動きになりますので、重要度はあまり高くないものに位置すると考えます。
  • ねじりの動作については他の股関節の動きの中に複合的に起こるため、評価も

    股関節の屈曲・外転・外旋

    股関節の伸展・内転・内旋

    などの複合動作で行う方がより実際の生活に直結した情報を得られることもあります。

 

股関節内旋

股関節の内旋は、ねじりの動きに関わっていて股関節の動きを作る上では欠かせません。

更に、加齢に伴って股関節は開いてくる(外旋、がに股)傾向があります。

これは一定範囲では仕方ありませんが、その加齢変化の流れに任せっきりだと問題が起こってきます。

そこで、内旋の筋力が適切に働くことで加齢変化を緩やかにしていくことは非常に大切になってきます。

 

検査の準備・手順

  1. 患者さんには、横向けに寝てもらいます。
    内旋-検査1
    下の脚はまっすぐ伸ばして安定性が保てるようであればまっすぐします。もし、不安定であれば軽く股関節・膝を曲げても構いません。上の脚は膝を90°近く曲げておきましょう。手は身体が安定しやすいような位置についておきます。
  2. 骨盤がねじれないように伝えておきますが、動き(代償動作)が出そうであれば骨盤を手で押さえておいてもよいです。
    内旋-検査5
  3. 足首のやや上のすねの外側あたりの位置に手を添えて床に押さえつける力を抵抗として加えます。
    内旋-検査6
  4. 合図とともに運動をしてもらい、必要に応じ抵抗を加えていきます。
    内旋-検査7

 

代償動作・注意点

  • 骨盤を傾けたり(骨盤 挙上)、
    内旋-代償1
    太ももを挙げたり(股関節 外転)
    内旋-代償2
    などの動き(代償動作)が伴いやすくなります。
  • 股関節 内旋の可動域が低い人が無理におこなうと、攣ってしまうことがあります。

 

臨床や実際の治療での応用

臨床上では、外旋のときと同じような留意点を意識しておくことが必要になります。

 

おわりに

今回紹介させていただいた動作に関しては、『徒手筋力検査』の本来の目的である
『筋力低下をみつける』
ことには、あまり臨床的に必要とされないことが多いと思います。

それよりは、実際に筋力を発揮したときの代償動作などから、

関節運動の連動パターン

筋力発揮の優劣のパターン

などを各動作の中でみつけていき、動作分析に役立てていくことの方が臨床的に有用かもしれません。

これらを本当に正しく行おうとすると

たくさんの練習時間や労力

実際の治療時間内にとられる時間

を考えても、ただの『検査手技』としてだけで終わらせるなら、かなり得られるメリットが少なくなってしまうことでしょう。

ただやり方をみるだけでない、自分の治療につながる手技とできるかどうかをテーマに習得していっていただければと思います。

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